ペーパーレス専門会社の株式会社vividです。
紙文書の電子化によるメリットは、すでにさまざまな業種の企業で実証され始めています。
この記事では、業務の効率化、顧客満足度の向上などを実現した事例を紹介します。
(経済産業省発表データを転載)
事例(1) 可搬性と検索性の向上で照会業務を効率化(保険業A 社)
業 種:保険業
事業規模:大手
対象文書:保険申込書
■導入理由(背景)
契約後の照会業務の手間が課題の一つとして認識されていました。
契約者が記入した保険申込書のデータはデータベース化していたが、正確な照会時は原本を確認する必要がありました。
保険申込書は大量に発生するため、保管コストが膨大になるだけではなく検索に時間がかかり、契約者からの問い合わせに迅速に回答できないといった問題が発生していました。
また、文書の安全な保管、長期の保存という要請に対してはマイクロフィルム化を実施してきしたが、照会業務に求められる迅速な検索は困難な状況にありました。
■課題解決のための具体的施策
A 社では、照会業務を迅速にすることと、正確な照会をするために次の手段を取りました。
・紙文書の電子化とマイクロフィルム化の同時実施
・OCR 技術の採用による証券番号の自動認識
・保険証券の発行に必要なイメージ情報からの自動的な切り出し
・ホストデータベースの属性情報とイメージ化情報(申込書)の自動的なリンク
■導入効果
迅速な照会業務が可能になったことで生産性が大幅に向上したほか、電子化文書をワークフローと連携させたことで、審査業務の効率化を実現しました。
結果、問い合わせに回答するまでの時間短縮と、顧客に対するサービスレベルが大幅に向上。
長期間の保存や重要情報の安全な管理、不測の事態などに対応する仕組みも整備されました。
事例(2) 業務処理の迅速化とコスト削減を実現(保険業B 社)
業 種:保険業
事業規模:大手
対象文書:保険申込書
■導入理由(背景)
全国の拠点で事業を展開するB 社にとって、保険の受付から契約の承認に至る業務処理の迅速化とコスト削減が大きな課題になっていました。
文書の安全な保管、長期保存という要請に対しては、すでに保険申込書のマイクロフィルム化を実施していましたが、従来の契約処理業務は、各拠点で受け取った保険申込書を本社の事務センターで集中処理するという方式が基本。
保険申込書の郵送によって生じる紛失リスクの回避や輸送コスト削減、処理時間の短縮が大きな課題として認識されていました。
また、照会業務で検索に時間がかかる、保管コストが膨大になるといった課題解決も求められていました。
■課題解決のための具体的施策
B 社は事務処理のスピード化とコスト削減を目標に、次のような施策を講じました。
・各拠点で保険申込書の電子化と複製化を実施
・各拠点の電子化文書を本社の事務センターに伝送
・新たな業務の流れに合わせて情報システムを刷新
■導入効果
各拠点で保険申込書を電子化し、本社に伝送することで輸送コストが削減できたほか、郵送に伴う原本の紛失リスクも低下。
従来事務センターで行っていたデータベース登録作業が不要になり、複写部数が減少するなど、業務処理コストの大幅な削減を実現しました。
また、電子化によって保険申込書の検索時間を従来の約1 時間から1~10 秒に短縮し、顧客からの問い合わせに対する迅速な対応も可能になりました。
事例(3) 紙のメリットを活かしながらファイリングと検索作業を改善(食品流通業C 社)
業 種:食品流通業
事業規模:中小
対象文書:FAX で受信する注文書
■導入理由(背景)
C 社がFAX で受信する注文書は1 日約300 件。
従来は3 人の担当者がその内容をホストコンピュータに入力し、顧客ごとに保管していました。
しかし、ファイリング作業に時間がかかり、ファイルの繰り越し作業にも時間が掛かっていました。
また、前月分のファイルは倉庫保管のため、該当資料の問合せ時には倉庫に足を運ばないといけない状況でした。
■課題解決のための具体的施策
C 社では、FAX で受信した注文書の処理業務を次のように変更しました。
・顧客企業から受信した注文書をイメージデータとして電子化
・FAX 番号を発信者ID として保管するフォルダを登録
・発信者ID を自動判別し、顧客ごとのフォルダへ時系列で保管
・FAX 用紙は顧客ごとのファイル保管から日別のボックス保管に変更
■導入効果
注文書に関する問い合わせ対応や確認の作業を、電子化して保管した FAX データを利用して実施することにより、従来約350社の顧客企業ごとに実施していた約3時間/日のファイリング作業、約 4.5 時間/月に及んでいた月末の棚の入れ替え作業を廃止できました。
また、問い合わせを受けた担当者が自分の席のパソコンで確認できるため、検索時間も短縮。1 件あたりの問い合わせ対応時間も約30 分に短縮しました。
事例(4) 電子稟議システムの活用に向け添付資料を電子化(通信業D 社)
業 種:通信業
事業規模:大手
対象文書:稟議書の添付資料
■導入理由(背景)
D 社では従来から、意思決定の迅速化を図るため、稟議書の電子化を推進してきました。
しかし稟議書の添付資料は紙文書が多く、稟議のプロセスにも紙文書が介在するといった問題がありました。
■課題解決のための具体的施策
D 社は、稟議書の添付資料を電子化するにあたり、次のような環境を整備しました。
・部課単位でイメージスキャナを導入
・組織的な活用を考慮し、部課単位で電子化した文書を共有フォルダに保存
・電子化する文書はJPEG 形式を基本とし、必要に応じてPDF 形式で利用
・独自開発のパッケージとLotus Notes で電子稟議システムを構築
・電子稟議システムのファイル添付機能を活用するように全社への周知を徹底
■導入効果
新たな電子稟議システムの利用だけでなく、稟議以外の連絡の際にも、電子メールと電子化文書を活用するようになりました。
従来と比べて稟議のスピードは確実にアップし、用紙削減や決裁文書の保管コストも削減。
過去の稟議書検索も容易になるなど、関連業務の効率向上という効果も表れています。
事例(5) 税務申告資料を電子化し顧客へのレスポンスを向上(税理士業E 事務所)
業 種:税理士業
事業規模:中小(30 名)
対象文書:税務申告資料
■導入理由(背景)
税理士業務で大きな課題となるのが、7 年間の保管義務です。
主な問題点は決算関係書類の保管コストと申告資料の作成コスト。
E 事務所でも、従来は顧客から預かった資料を基に税務申告に必要な資料を作成し、納品するという一連の業務が紙文書をベースにして行われていたため、この課題に直面していました。
膨大な紙文書の保管スペースを確保する必要があるほか、作成した資料は、納品後も証拠として保管すべき文書を選別しファイルに整理するといった作業が必要になるためです。
また、膨大な紙文書の存在は、顧客ニーズへのクイックレスポンス向上を達成する上でも大きな課題でした。
総勘定元帳などの大量の紙文書を提供する際には、検索を容易にするインデックスを付加するといった作業が必要ですが、その製本作業の負担が大きいため時間もかかり、レスポンスの低下やコストの増大につながっていたためです。
■課題解決のための具体的施策
E 事務所では、イメージスキャナ(複合機)、電子化文書の出力と電子化文書上で書き込みが可能なソフトウェア、Windows 搭載のパソコンで電子化文書のCD-ROM への記録・確認ができるソフトウェアを導入し、次のように業務を変更しました。
・原本保存が必要な紙文書を選別し、それ以外の文書を電子化
・顧客からのFAX 受信を電子化文書受信に変更
・顧客への成果物納品を製本した印刷物の郵送から CD-ROM での提供、電子化文書の送信による提供に変更
・資料作成に伴う質問事項を電子化文書に注釈として付記
■導入効果
電子化によって紙文書の破棄が可能になり、文書保管コストを年間 54 万円削減したほか、顧客からのFAX 受信を電子化文書受信に変更したことで年間12 万円のコスト削減を実現。保管した資
料の検索が容易になるなど、管理業務の効率も大幅に向上しました。
また、成果物を電子化文書で送信することで、完成から納品までの時間も短縮。
作業に伴う質問事項を電子文書に注釈することによって、顧客にも理解しやすい的を射た質問ができるようになり、訪問や来所の回数が減少するなど、完成までの時間短縮にもつながりました。
さらに総勘定元帳のような膨大な文書は CD-ROM で提供することで製本コストを軽減しただけではなく、顧客に対して従来の紙文書より検索性の向上した成果物を提供できるようになりました。
事例(6) 請求書の電子化で保管費用の削減と問い合わせ対応効率向上を実現(製造業F 社)
業 種:製造業
事業規模:中堅
対象文書:取引先からの請求書
■導入理由(背景)
F 社が取引先から受け取る請求書は約 7,500 枚/月、ダンボール約 50 箱/年に達しており、経理部門にとってはファイリング作業や書庫スペースなどの保管費用の大きさが大きな課題として認識されていました。
保存期限後の廃却処理も、担当者が書庫に足を運び書類ごとに対象を選定するなど、作業負担が大きいことも課題でした。
また、請求書は社内外からの問い合わせが多いため、検索の手間も大きなものになっており、保管作業に携わった担当者以外は探し出せない状況も発生していました。
さらに税務調査でも全件提示を求められるのが請求書。
段ボール箱を運ぶなど、税務調査の準備作業負担も大きな課題でした。
■課題解決のための具体的施策
F 社では検索時間の短縮と保管費用の削減を目標に、次のような施策を講じました。
・本社経理部門にスキャナによる請求書の電子化・保存システムを導入
・保存データの訂正・削除履歴を確保するシステム対応
・スキャナ保存データに電子署名とタイムスタンプを付与
・保存データと帳簿の関連付けを行い、素早く検索できるツールを開発
・電子化の方法や業務フローを明確化するなど、社内規定を整備
■導入効果
日常的に発生する問い合わせ対応や費用分析に電子化したデータを活用することで、「誰が、どこから、何を、いつ、いくらで、どのような目的で」購入したかを迅速に把握できるようになり、社内外からの問い合わせ対応効率が 10 倍向上しました。
また、保管スペースの全廃、担当者の検索時間短縮により、従来の保管費用も大幅に削減しました。
事例(7) プロセス全体の文書を電子化し保管コストを軽減(製造業G 社)
業 種:製造業
事業規模:大手
対象文書:保守検査記録文書
■導入理由(背景)
特殊産業機械(プラント)の設計から製造、保守に至る一貫したサービスを提供する G 社では、サービス提供の過程で発生する 10~50 年の保存を必要とする膨大な紙文書の保管コスト増大、定期検査での作業負荷の大きさが大きな課題でした。
特に大きな要因は、長期保存が必要な設計図やプラント製造過程の業務記録、試験検査記録、検査時の部品交換記録、定期検査の記録などの文書の大半が図面を伴うなど、テキスト化できない文書だったことにあります。
この結果、プラントによっては初期段階の設計データなどに加え、毎年実施する定期検査の 20 年間の検査記録も含めると保存文書がファイル約200 冊に及ぶなど、保存スペースも含めた保管コストの増大を招いていました。
また、毎年実施する定期検査の都度、過去の検査データなどの文書が必要になることから、検査用の文書を収集するための作業負荷も大きなものでした。
保存文書を必要な時に迅速に取り出して活用でき、さらに企業秘密などのデータが含まれる文書であるという理由から、機密を保持した安全で確実な文書管理が求められていました。
■課題解決のための具体的施策
G 社では、文書の検索性向上と保管コスト削減を目的に、次のような施策を講じました。
・平成10 年以降に納品したプラントの設計から製造、保守に至る一連のプロセスで発生した約50万枚の文書を電子化
・電子化文書を対象にした文書管理運用マニュアルを作成
・運用マニュアルに検索性向上のための検索情報を付加
■導入効果
定期検査時や定期工事で必要な過去の資料収集、必要に応じて実施する他プラントの事例収集などで発生していた、人的な作業プロセスが不要になり、検索性も向上。
必要な文書を必要な時に参照できるなど、定期検査業務の効率が大幅に向上したほか、削減した紙文書の保管スペースを他の用途に有効活用できるようになりました。
また、保管コストでは、従来の50 万枚に及ぶ紙書類の保管に必要な倉庫での保管料が約1/3 に軽減され、資料収集のための専従作業員の人件費約1,000 万円が不要になりました。
事例(8) 社内稟議書の電子化で稟議プロセスを大幅に短縮(運輸業H 社)
業 種:運輸業
事業規模:大手
対象文書:社内稟議書の添付書類、経理関連帳票
■導入理由(背景)
大手鉄道会社のH社では、2005年度から全社的に社内稟議書作成ツールの運用を開始しました。
しかし、社内稟議では見本やパンフレットなどの添付書類が必要なことが多く、稟議プロセスの効率化という観点から、添付書類の電子化によって稟議書本体と保存形態を統一することが、避けて通れない課題として認識されていました。
また、社内稟議書の作成にあたり、保存してある過去の稟議書などの資料を活用したいというニーズも顕在化していました。
また、e-文書法の施行を受け、経理関連帳票の電子化によって決算処理期間の短縮と安全で確実な管理を実現したいという要請も高まっていました。
■課題解決のための具体的施策
H 社では、社内稟議プロセスの効率化、決算処理期間の短縮を大きな目的とし、次の施策を講じました。
・社内稟議書作成ツールの補完システムとして、スキャナによる添付書類の電子化システムを導入
・各支社にスキャナを導入し、社内チェック用の小額の領収書および各種元帳、仕訳帳、現預金出納帳などの経理関連帳票を電子化
■導入効果
社内稟議書の電子化により利便性が向上し、稟議が完結するまでの時間が大幅に短縮されたほか、添付書類も電子化されたことで、稟議内容に関する社内への周知が、より徹底されるようになりました。
また、過去事例の検索が容易となり、類似の稟議書を作成する作業効率も向上しました。
保管コストについても、本社管理部門で年間数百万円削減という効果を創出しました。
事例(9) 顧客融資関連情報の電子化により業務スピードを向上(金融業I 社)
業 種:金融業
事業規模:大手
対象文書:社内稟議書、顧客融資関連情報
■導入理由(背景)
金融業の事業特性は、すべての業務において文書記録の保存が必要とされることにあります。
I社では、長期保存が必要でありながら必要な時に取り出す必要があること、保存文書には企業秘密などのデータが含まれるため、機密を保持した安全で確実な管理を行う必要があるということを文書管理の課題として認識していました。
■課題解決のための具体的施策
I 社では、次の2 種類を対象に文書の電子化を実施しました。
・社内稟議書
・顧客融資関連情報(決算書など)
■導入効果
特に大きな効果として表れているのは、顧客融資関連情報の電子化による効果です。
電子化により、融資稟議書の短時間での作成や申請が可能になったほか、社内での情報共有による検索効率が向上し、営業店舗など他の関連業務にも「スピード感が出ている」という評価を得ています。